2006年4月27日 (木)

タイムトラベルの大傑作「マイナス・ゼロ」

最近観た映画で、タイムトラベルものがいくつかありました。

傑作だった「バタフライ・エフェクト」あり、駄作だった「サウンド・オブ・サンダー」あり、さらには「戦国自衛隊1549」、DVDで「タイムライン」も見ました。
一昔前なら、バック・トゥー・ザ・フューチャーという傑作もありました。

いずれもエンターテインメントとしては良くても、タイムトラベルそのもののに関する設定は少なからず強引です。

タイムパラドクスをいかに上手く説明できているかという部分については、納得する作品に出会ったことはありません。

そもそも、もしタイムマシンが出来たとすれば、必ずタイムパラドクス(矛盾)が発生します。

有名なのがいわゆる「親殺し」ですね。
タイムマシンで過去に戻って自分を産む前の親を殺したら、自分はどうなるのか?
親が死んだ以上、自分は生まれないはずであり、生まれないと親は殺されなかったことになり、親が死ななければ自分が生まれて親を殺したはずであり。。。

他にも、過去に何らかの変化を加えてしまったら、現代には大きな変化が起きるはず、という前提があり、このテーマを「サウンド・オブ・サンダー」では取り扱っていました。
「戦国自衛隊1549」も同様ですね。
しかし、映画では過去で与えた影響が、現代に急に現れることになっていますが、それはありえません。

100年前に変化があれば、それはその後100年に渡ってずっと変化が広がっていくわけで、急に現代が変わるなど、基本的なタイムトラベルの知識がまちがっています。

この変のややこしい概念を勉強するのにもってこいなのが、広瀬正著「タイムマシンのつくり方」。
別に解説本であるわけでなく、短編小説集です。これはいいですよ。

タイムパラドクスを説明する方法として色々な解釈があるのですが、それを小説の形でわかりやすく著しています。
傑作です。

そしてその広瀬正氏が書いたSFタイムトラベルものの大大傑作が「マイナス・ゼロ」という作品です。
これはすごい。
本当にすごい。
タイムトラベルによるパラドクスを逆手にとった見事なストーリーを展開します。
読み終わった後、感激しますよ!!
ええーー!!こんなのあり!!すごい!!すごすぎるよ!!てな感じ。(ちょっと誇張)

惜しむらくは、この小説が書かれたのが昭和40年ごろで、小説の中の「現代」が昭和38年と今から40年以上前のため、世界感が古すぎることですね。
過去に戻った先は昭和7年だったりして、世界が違いすぎます。
しかし、小説として面白いのには変わりありません。
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」が大ヒットしたことを思えば、逆にこういう作品が受け入れられる可能性もありますし。

ただ、最大の問題は、この小説がとっくの昔に絶版になっていて、今では本屋で買えないことです。
「タイムマシンンのつくり方」も同様です。
Amazonのユーズドコーナーでは、文庫版がいずれも1000円~1500円くらいで買えますので、興味ある人はいかがでしょう。

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02



| | コメント (1) | トラックバック (1)

2006年3月23日 (木)

井上夢人著「オルファクトグラム」

オルファクトグラムとは嗅覚のこと。主人公の男性は実の姉を暴行され殺される現場に乗り込んだ際、犯人に殴られ1ヶ月間意識不明に。
意識を取り戻した彼は、とてつもない違和感を感じる。人には見えない色々なものが見えるのだ。
段々と、それが匂いが視覚的に認知されていることに気づく。しかも匂いの感度で言えば犬以上の嗅覚に相当する。
彼はその嗅覚を利用して、行方不明の友人の捜索を開始する。
それはやがて、姉を殺した犯人探しへと発展していく。。。。。。

かなりの長編ではありますが一気に読めました。面白い。
自分は科学的なことが大好きなのが、嗅覚を視覚的に認知するという理論の解説は非常に興味深かったです。
ひょっとしたら実際にそんなことがある得るかも!と思わせるだけのものがありました。

文庫本の上巻では、主人公の嗅覚そのものの解説が中心となっていき、ストーリー的に大きな進展はありません。
後半ではいよいよ犯人を見つけ、追い詰め、対決するわけですが、肝心の対決シーンはあまり盛り上がりませんでしたので少し残念です。

主人公が直前にxxxxを入手したことで、最後でそれを使用するであろうことは当然予測できるわけで、その上で、なかなかそれを使えない状況だったり、犯人に取り上げられたりといったことがあるわけでもない、緊迫感が少し薄い展開でした。

しかし全般に渡って、主人公が超嗅覚を使って周りが愕然とするシーンは快感でした。
部屋に入っただけで、そこにいる人が朝ご飯に何を食べたか当てたり、何日も前に停まっていた車のタイヤの匂いから車の大きさを割り出したり、とにかくすごい。
まさしくスーパーマン。

ハリウッドで映画化されたら結構面白い作品に仕上がるんじゃないでしょうか。
と、おもったら既に日本でビデオ化はされていたみたいです。
もう絶版なのですがどうしても見たくて中古で購入しちゃいました。
まだ観てないんですけどね。

CHON的評価

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月20日 (月)

井上夢人著「メドゥサ、鏡をごらん」

井上夢人著「メドゥサ、鏡をごらん」

ずっと前に購入していたものの読んでいませんでした。

井上氏のこれまで読んだ作品「ダレカガナカニイル...」「クラインの壷」「プラスティック」といずれも面白かったので、期待したのですが、正直今ひとつでした。
しかし、これは読む前の心構えの問題かもしれません。

井上氏の作品は広域な意味でのミステリーに入るかもしれませんが、SF的設定があったり、謎が謎のまま終わったり、ホラー的な要素が非常に大きいです。
この作品は、もはやミステリーではなくホラー小説だと思います。
そう思って読めば確かに怖い作品で、よく出来ていると思います。

しかし、少しでもミステリーだと思っていると、拍子抜けというか、「そんなのあり!?」っていう感じで終わってしまうので面食らいます。

CHON的評価 ★★

(ただし、ホラー小説としてなら ★★★☆☆

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

井上夢人著「プラスティック」

井上氏の作品としては、CHON的お気に入りとして『ダレカガナカニイル・・・』があります。これは間違いなく傑作です。
他にも(岡嶋二人名義ですが)『クラインの壷』も面白かった。
氏の作品は、広い意味ではミステリーではありますが、限りなくSFやホラーに近い感じのものが多いです。

その意味でも、この「プラスティック」も彼らしい作品です。

ある主婦の一見平凡な日記から始まる54個の文章。色々な書き手の視点で書かれながら、事件は発生し物語りは展開を見せていきます。
問題は、その書き手の違いによって書かれている事実が違うことです。

何が真実なのか、こいつは一体誰なのか、あいつも誰なのか。。。。

物語が進むにつれ、段々とそれらがわかっていきます。
なるほど。。。面白い。

しかしこの小説の本質はラストの54章にあります。ネタバレですので書きませんが、この小説の締めくくりとしては見事としか言い様がありません。
なんともいえない怖さが残ります。

CHON的評価 ★★

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月16日 (木)

東野圭吾著「ゲームの名は誘拐」

最近映画化されたこの作品。
犯人側の視点のみから描かれる狂言誘拐という面白い設定です。

主人公の佐久間が、仕事上で恨みを持つクライアント会社の副社長の家出娘である樹里と偶然出合ったことから、二人で狂言誘拐を起し身代金をゲットしようとたくらむ。
作戦は確実に進行し、見事うまくいくように思えた。しかし事件は意外な展開を見せる。。。

比較的短い作品ですし、どんどん引き込まれていくのであっという間に読みきってしまいました。
なかなか面白かったです。
順調に進んでいたはずの誘拐劇の中に、様々な伏線がちりばめられていて、それらが最後に見事な形になります。

短所としては、東野氏にしては人物の表現が薄いというか、骨がない気がします。
ややステレオタイプ気味に描かれる登場人物が少し残念でした。

ミステリーとしても、ちょっとうまく収めすぎているような感じもあります。
単なるパズル的作品を書かない東野氏にしては、パズル的な解決に収めてしまったかも。

CHON的評価 ★★★☆☆

映画は原作とちょっと違うようなので、それも機会があれば観てみようとおもいます。

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (2)

折原一著「耳すます部屋」(短編集)

う~ん、折原氏らしい叙述ミステリーなのだが、かなり物足りない。
ただ単に意外なラストだけに重点を置いている感じがして、物語としての完成度が低いように思えます。
先日の今邑彩著「よもつひらさか」のほうが、ひねりが効いていて、なおかつ余韻が残るラストで、レベルとしては数段上でしょう。

ただ、唯一「真夏の誘拐者」だけは面白かったです。

CHON的評価

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月15日 (水)

折原一著「倒錯の帰結」

前半・後半・中央の袋とじの3部に分かれていて、前半を読むと横溝正史氏の作品を連想させる「首吊島」、後半を反対から読むと「監禁者」という別々の2つの物語を読むことが出来、最後に中央の袋とじを破って読むことで、2つの物語のリンクと真相が明らかになります。

折原氏の作品はいつも、『作中作』だったり『作中作中作』だったりして、何が本当なのかわからくなるような構成なのですが、この作品はその真骨頂とも言えるものでした。
パズル的な構成が最後にばっちりとはまるというよりは、ある部分でははまっているが全体を見るとどういう形なのかやっぱり分からないというような不思議な作品です。

倒錯シリーズの完結編としての完成度、面白さは最高だと思いますが、最後はやはり無理が出ていたように思います。
身内ネタもどうかと思いますし。。。(読めば分かります)

CHON的評価 ★★★☆☆

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

岡嶋二人著「99%の誘拐」

ちょっと古く、1988年の作品ですが、2005年の「この文庫がすごい」の第1位に選ばれた作品だったので購入してみました。

8年前発生した誘拐身代金事件は、結局身代金だけ取られ犯人を捕まえることが出来なかった。
そのとき人質になっていた少年は大人になり、前代未聞の巧妙な誘拐事件を起す。

そのトリックは正に驚嘆です。
この小説が書かれたのがだいぶ前の話なので、携帯電話もないしハイテク機器類が古臭かったりするわけですが、それでも現代でも通用する壮大なトリックでした。

【以下ネタバレにつき反転】

99%という以上、残りの1%の部分のほころびによって誘拐は失敗するのかと思いきや、普通に成功してしまいました。

仰天のラストがあるわけでもないので、緻密な誘拐そのものは非常に面白く読みましたが、小説全体として、ミステリーとしては物足りませんでした。
ミステリー的なオチでなくても良いので、小説としてのなんらかのオチが欲しかったです。

CHON的評価 ★★★☆☆

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

今邑彩著「よもつひらさか」→そして読書三昧

私はミステリー小説が好きで、2~3年前までは、会社でつきに一度くらいの東京出張があったため、新幹線の社内でよく読んでいました。
家ではゲームをしたり、HDDレコーダーに取りためたドラマを見たりして、時間がないんですよね。
しかし、ここ2年ほどは出張の数が減ったのと、行く場合でも飛行機を使うようになったため、読書する時間がなくなっていました。

時々気になった新刊を買ったりしても、未読のまま溜まっていました。

とろこが、最近再びミステリー小説にはまっています。

そのきっかけになったのは、テレビの「世にも奇妙な物語」でした。
秋に放送されたこのドラマの中のひとつで、インターネットの掲示板に性別を偽って女性友達募集をかけていた既婚男性の話が、結構面白くて、エンドクレジットを見たら、
原作 今邑彩『穴二つ』
とありました。今邑彩の作品は昔よく読んでいたのですが、もう7~8年くらい読んでいませんでした。

調べてみると『穴二つ』は、短編集「よもつひらさか」の中の一編のようです。
短編集ということもあり、気軽に読めるだろうとこの本を買って読んでみると。。。

おもしろい!実に面白い!
まさに世にも奇妙な物語が詰まっていました。
どの短編も、ひねりが効いていて予想外のラストがあります。

久々に読書に酔いしれた私は、他の本も読みたくなりました。

そこへ、登場するのが、第2のきっかけとなる東野圭吾作『白夜行』です。
先日の記事でも書いたとおり、東野氏の大ファンであるにも関わらずこの本を読んでいなかったのは、文庫本にして860ページという厚さのせいでした。
しかし、ドラマ化され話題になり、テレビの第1回放送を見て大変面白かったため購入を決定。

その厚さを感じさせないほど没頭して読んでしまいました。
他にも東野作品が読みたくなって「容疑者Xの献身」も読みました。

こうして読書を再開してみると、やはり大変面白くて、どんどん読みたくなったので、本棚から未読を引っ張り出してきたり、新規購入したりしてたくさん読みました。
というわけで、これからしばらくは読んだ作品についての読書レポートを書いていこうと思います。

とりあえずは「よもつひらさか」の評価を。
CHON的評価 ★★★★★

オススメです!

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月 6日 (月)

東野圭吾「時生(トキオ)」読了

「白夜行」「容疑者Xの献身」と続けて東野氏の本を読んだ勢いで、未読であった「時生」を読みました。

氏の作品に時折見られる、SFチックな設定の物語。

不治の病に侵され死ぬのを待つだけの息子「時生」を見守る両親。父親巧実は「実はオレは23年前時生に会っているんだ」と、衝撃の告白を妻に始める。
23年前に何があったのか・・・・・

こういう設定は私は大好きです。
みなさんと同様、最後の1行にジーンと来ました。

ただ、物語の大半を占める23年前の物語そのものは、あまり面白くありませんでした。
巧実とトキオの絡みはとても印象的であり、巧実が自分の出生の秘密に図らずも迫っていく場面もとてもよかったですが、分かれた恋人の救出劇という流れ自体が全く面白くありません。
安物の2時間サスペンスを見ているような展開は正直不要でした。もっと引き込まれるストーリーを軸にして欲しかったです。

ただ、23年前の最後、トンネルのシーンは印象的でした。
未来の両親を前にトキオはどんな思いで行動していたのでしょうか。
そしてどんな思いで消えていったでしょうか。

悲しく切なく、しかし胸に温かいものを感じることもできるラストでした。

CHON的評価 ★★★★☆

↓この記事に共感した方はクリックをお願いしますbanner_02


未読の人はこちらからどうぞ!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧